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半導体製造装置と材料、日本のシェアはなぜ高い? ~「日本人特有の気質」が生み出す競争力 (湯之上隆, 亀和田忠司)

引用出展: EE Japan 湯之上隆のナノフォーカス(45)


過去、現在、未来を洞察するうえで、重要な分析だと思う。

<もくじ>


SEMICON Japanからの講演依頼


前工程の装置と材料のシェア

日本のシェアが高い装置、材料、部品の分類

日本のシェアが低い装置の分類

日本のシェアが高いものと低いものに関する比較および分析


欧米人はどのように装置を開発するか

日本人と欧米人の発想と行動様式の違い


3D IC時代のパラダイム・シフト

後工程プロセスの概要とパッケージが果たしている役割

後工程/パッケージの意思決定とモノの流れ


基板材料、基板、後工程材料、後工程装置のシェア

後工程/パッケージ用の装置や材料の競争力の源泉


<総括>

前工程と後工程/パッケージ、それぞれについて、その装置や材料について、日本シェアを明らかにするとともに、なぜその分野の日本シェアが高いのか(低いのか)を分析し考察した。


前工程では、液体、流体、粉体など、形がないものを取り扱う装置や材料の日本シェアが高い。一方、光や電子ビームおよびプラズマ装置などの日本シェアが低い。これらのシェアの高低は、日本人と欧米人の発想と行動様式の違いによって生じると推測した。


後工程/パッケージでは、基板材料、基板、後工程装置と材料のほぼ全てにおいて、日本のシェアが高いことが分かった。それらを分類すると、ある一つの分野に特化して独占的なシェアを築いて他社を寄せ付けない企業、ワールドクラスの技術で他社を圧倒している企業、包括的な取り組みで複数の分野のシェアを獲得している企業などがあることを論じた。


そして、前工程と同様に、後工程/パッケージにおいても、現場の技術者の真面目で実直なモノづくりなど、極めて日本人的な特徴がその競争力の源泉にあり日本人的な発想や行動様式が高いシェアに結びついていると推測した。


では、現在高いシェアを有している前工程および後工程/パッケージの各分野で、今後もそのシェアを維持していくことができるだろうか?


「われわれが1番である」とその座にあぐらをかいたがために、転落していった企業や産業の事例は、枚挙にいとまがない。半導体産業でいえば、1980年代に栄華を誇った日本のDRAM産業や、2010年以降にほぼ壊滅した日本のSoC事業などが挙げられよう。


装置や材料の分野においても、韓国や中国が国を挙げて自国生産を加速しようとしている。また、欧米では人工知能(AI)を使って装置やプロセス開発を行う動きが活発化しており、日本の職人芸を凌駕してしまう可能性がある。


日本が現在の高いシェアを維持・向上させるためには、開発の手を一瞬たりとも緩めてはならない。場合によっては、欧米の開発方法の良いところを取り入れることも必要である。


筆者は6月1日の衆議院の意見陳述で、「強いものをより強くするべきである」と主張した。装置や材料の各企業は、自社のストロングポイントを徹底的に強化することにまい進して欲しいと思う。その上で、3D ICの時代でも、世界的な競争力を発揮して頂きたい。



<筆者プロフィール>

湯之上隆(ゆのがみ たかし) 微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。


亀和田 忠司(かめわだ ただし) AZ Supply Chain Solutions オーナー

1962年生まれ。東京都出身。1984年現ASMLのパーキン・エルマー社に入社。米国コネチカット州の2年間駐在を含み1987年まで在職。1987年インテル・ジャパンに転職し、国際購買部にて日系メーカーのDRAM、半導体製造装置、半導体パッケージ基板を担当する。1997年インテルのアリゾナに移籍し、半導体パッケージ基板、製造装置、基板材料のサプライ・チェーンをマネージする。2018年にAZ Supply Chain Solutionsを立ち上げ、ビジネス・コンサルタントとして、アジアのクライアントと米系の半導体メーカーの開発案件、ビジネス契約のサポートに従事する。



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