top of page
Guest

【分析】台湾の五大信頼産業推進計画(24/9) 1.半導体産業

2024年9月に台湾行政院が発表した「五大信頼産業」の序言と結語は下記のよう記されている。
【前言】一国の総合的な実力は、国防や国家安全の側面だけでなく、経済産業の実力も主要な鍵である。台湾は現在、地政学的な変化、産業サプライチェーンの再編、デジタルおよびネットゼロの二軸転換という挑戦と転機に直面しており、国家実力の向上が求められている。地政学的な変化がもたらす商機を捉え、世界のサプライチェーンでの重要な地位を確保するため、頼清徳総統は2024年(民国113年)5月20日の就任演説で、半導体、人工知能、軍事、情報セキュリティ、次世代通信の「五大信頼産業」を、将来のグローバル展開の重点産業に位置づけることを宣言した。これを実現するため、行政院は同年9月5日に「五大信頼産業推進計画」を承認した。この計画は、関連産業の発展を通じて台湾をグローバルな民主技術陣営にとって不可欠で信頼されるパートナーとし、イノベーションの推進によって多種多様な産業の発展を促し、高給与の雇用を創出するとともに、国家の安全と回復力を強化することを目指している。 【結語】「五大信頼産業」は、頼総統が提唱した国家的なビジョンであり、「国家希望プロジェクト」の重点項目である。これは極めて高い戦略的意義を持つものである。将来、政府は半導体およびAI産業の二大核心を通じて、我が国を世界のサプライチェーンにおける重要な地位へと発展させ、経済成長を促進し、高給与の雇用機会を創出する。また、軍工、情報セキュリティ、次世代通信産業を推進し、投資環境を継続的に整備するとともに、産業エコシステムを構築する。さらに、国内外から優秀な人材を惹きつける努力を強化し、台湾を「経済の沈まぬ太陽」の国として構築することを目指す。
五大信頼産業として掲げられているのは「半導体」「AI人工知能」「軍工」「安控(情報セキュリティ)」「次世代通信」。内容は非常に明瞭で、JETROでもよく整理されているので、ここでは、世界市場との関係、その内容に含まれる構造について若干の考察をする。まず、半導体産業についてみる。

<もくじ>

1、半導体産業

 1-1、世界半導体市場(製品と設計)と台湾

 1-2、世界半導体材料市場と台湾

 1-3、世界半導体製造設備市場と台湾

 1-4、まとめ


1、半導体産業
台湾は、半導体製造分野で世界一位、設計分野では世界二位の規模を誇っています。製造では、ウエハプロセスで世界トップのTSMC(台積電)、パッケージで世界一のASE(日月光)が存在します。設計分野では、Mediatek(聯発科)が世界第5位の地位を占めています。
また、生産に必要な材料市場は世界最大規模を持ち、製造設備市場は中国、韓国と並び世界トップ3に位置しています。しかし、材料や製造設備の国内生産シェアは世界全体の5%にも満たず、多くを輸入に依存しているのが現状です。また、米中技術競争の中で、世界的な経済及びサプライチェーンの地域化の流れがあります。
こうした状況を踏まえ、台湾の産業戦略は、強力な製品生産力を基盤に、必要な材料や製造装置を「地産地消」化する方向に進んでいます。材料、設備、製品、設計を結びつけた産業クラスターの強化が重要な目標とされています。そのために、海外の有力企業の直接投資を積極的に誘致する施策を進めています。
さらに、産業クラスターを支える基盤として、人材教育・育成が不可欠であるとの認識で、政策支援も充実させています。このような取り組みによって、台湾は持続的な半導体産業の発展を目指しています。

1-1、半導体市場(製品と設計)と台湾
WSTS春季推定(図1、図2)によれば、 世界の「半導体市場」は2023年は5269億USD(79兆円)、2024年は前年比16%増の6112億USD(91兆円)の見通し。 世界の「IC市場」は2023年は4284億USD(64兆円)、2024年は前年比20%増の5175億USD(77兆円)の見通し。 世界の「ロジックIC市場」は2023年は1786億USD(27兆円)、2024年は前年比11%増の1977億USD(29兆円)の見通し。 TSIA(図3)によれば、 台湾の「IC産業生産額」は2023年は4.3兆NTD(20兆円)、2024年は前年比22%増の5.3兆NTD(25兆円)の見通し。 台湾の「IC製造生産額(ロジック、メモリ等)」は2023年は2.7兆NTD(12兆円)、2024年は前年比28%増の3.4兆NTD(16兆円)の見通し。 台湾の「ウエハファウンダリ(=ロジック)」は2023年は2.5兆NTD(12兆円)、2024年は前年比29%増の3.2兆NTD(16兆円)の見通し。メモリは殆どない。
台湾のロジック製品の概算シェアを計算すると、2023年は44%になる(12÷27)。実際には、TSMCの生産額と、NVIDIAやQUALCOMの販売額が2重計算になっているので、生産シェアは更に高いことが推察できる。 トレンドフォース(図4)によれば、 24年Q2のファウンダリTOP10に於ける台湾企業(TSMC,UMC,VIS,PSMC)のシェアは70%。TSMCは62%で断トツのトップである。



トレンドフォース(図5)によれば、 23年のIC設計業のTOP10に於ける台湾企業(Mediatek,Novatek,Realtek)のシェアは12%
Mediatekは8%で、NVIDIA33%、Qualcomm18%、Broadcom17%、AMD14%に次ぐ第5位である。


台湾の計画は、
①ウエハファンダリとパッケージ産業で世界をリードする地位を維持する、
②IC設計産業は世界上位2位以内を維持し、2028年に先進工程採用比率50%を達成する。
台湾は、半導体生産では世界一の地位を、IC設計も米国に次ぐ2位にあり、それを維持していこうというものである。

1-2、世界半導体材料市場と台湾

SEMI推定(図6)によれば、世界の「半導体材料市場」は2023年は667億USD(9.9兆円)。台湾は2022年に続き世界一の市場で、全体の約29%、192億USD(2.9兆円)。

台湾の計画は、「半導体材料生産額を3割増加させ、528億NTD(2455億円)に引き上げる」。
現在の台湾生産額は406億NTD[528÷1.3](1888億円)となり、上記市場を前提とすれば、台湾生産額÷世界市場=2.5%、IC生産額のシェアと比較すると非常に小さい。材料生産額3割増の計画は、依然小さいものの、材料生産をUPさせようとする計画と考えれる。

1-3、世界半導体製造設備市場と台湾

SEMI推定(図7)によれば、世界の「半導体製造設備市場」は2023年は1059億USD(15.8兆円)。台湾は中国、韓国と並ぶ大市場である。

台湾の計画は、「半導体設備産業の生産額を倍増させ、800億NTD(3720億円)に引き上げる」。現在の台湾生産額は400億NTD[800÷2](1860億円)となり、上記市場を前提とすれば、国内生産額÷世界市場=1.2%、ICの生産額の比率と比較すると非常に小さい。設備生産額倍増の計画は、依然小さいものの、設備生産をUPさせようとする計画と考えれる。

1-4 まとめ

台湾は、世界的に重要な地位を占める半導体産業を強化するために、政府は、技術開発支援、人材育成、税制優遇、インフラ整備、国際協力の推進政策を進めている。

推進計画では、具体的には、
先進工程と先進パッケージング技術の発展(2.5D/3D等の異質整合の先進パッケージング、HPCやシリコンフォトニクス技術などの先進プロセス技術の促進)、
設備と材料の国内協力促進(国際大手企業と自国企業の連携でサプライチェーン強化と先端技術研究促進、台湾製設備の採用奨励、材料と設備の自国内生産推進、材料と設備の国際サプライチェーン連結促進)、
IC設計の研究開発促進(IC設計の研究開発補助推進、先進プロセスICの設計人材育成、先進半導体研究開発とテスト生産拠点作り、IC設計のスケール化と効率化促進)、
新世代半導体技術の開発促進(化合物半導体関連技術開発支援、量子チップと応用の支援、先進チップ応用開発作り)に取り組んでいくことを明示している。

換算為替レート:4.65円/NTD 149円/USD 32NTD/USD

By S.Y.


閲覧数:26回0件のコメント

Comments


bottom of page